今回は刹那、木乃香は学校卒業後就職しているというパロディ的設定です。
OKだぜ!
まあ、暇だから読んでやってもいいよ。って心の広い方は続きを読むからお願いいたします!
このせつ長編「未来2」
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このせつ長編「未来2」
=未来 2=
「さ、うちも会社に戻らんと・・・。」
うーんと伸びをして、木乃香はオフィス街を歩き出す。
ランチタイムは、会社ばかりあるこの街が表情を変える時間だ。
どことなく浮き足立つような表情の会社員が、OLが街を財布片手に歩く。
木乃香も例外ではなく、先ほどまでは刹那とともに昼食を取っていた。
忙しい彼女とはついさっき信号前で別れたばかり。
木乃香は余った昼食時間をフルに使って少し遠回りのルートで散歩をしながら会社に戻ることにした。
仕事が違う二人が昼食を供にすることはあまりない。
会社が同じでも木乃香と刹那は働く部署が異なる。木乃香は秘書という役柄、会社を離れる機会はあまり多くはない。対する刹那は他の会社への訪問や出張が多いのだ。
だから今朝、出勤時エントランスで刹那に呼び止められ昼食に誘われたときは胸が躍ったのだった。
オフィス街の中心にある公園。足は自然とそこへたどり着いていた。
都会のオアシス。そんな目的で人工的に埋められた木々の作った木陰。不自然でもその日陰は心地がよかった。
さっきまでのことを思い出す。
*
「・・・珍しいな?せっちゃんがランチなんて。」
今日の昼ごはんを一緒にどうか?という彼女の申し出にもちろん一つ返事でOKを出し、昼休み会社のロビーで待ち合わせた。
私たちは昼食を少し軽めにカフェで、ということにした。これも刹那の提案だ。
会社から歩いて12,3分。ちょっとした散歩になる距離にあるこの店は、ヨーロッパ風の少し小洒落た外装、珈琲の種類が豊富でサイドメニューは野菜が何かと豊富。そのため客層はOLが多い。
人気店で噂では聞いていたが、ランチタイムはめっぽう混むというので倦厭していたのだが、刹那が行こうというので、そんな自分の考えをおくびにも出さずに頷いたのだ。
しかし、この場所を刹那がチョイスするとは意外だった。
「珍しい・・・ですか?昼食はちゃんといつも取ってますよ?お嬢様にしかられますからね。」
はにかんで、笑顔で答える彼女の論点はいつもどこかずれている。
私は曖昧に笑い、カフェラテを一口すする。ちなみにトッピングとしてハチミツを入れていて、すごく甘い。
「そうそう、忙しいんやからご飯はちゃんと取らんと倒れてまうよ?」
私は仕方なく話の調子を合わせる。それにしてもこの会話では‘せっちゃんのお母さん’みたいだ。
「・・・・ご心配お掛けしてマス。」
くすくすと笑いながら彼女はサンドイッチを頬張る。レタスが多めに入っていて、しゃきしゃきと音がした。
彼女は微笑む。私と向かい合っているときはたいていそうだ。
けれど、笑っている彼女の表情は時折複雑に見える。
本当は笑ってないような、困っているような。
時々そんな顔を見せる。
学生の頃、私は彼女の心情が面白いように分かっていた。
ころころと変わる表情や、純粋な思考が彼女の持ち味だったから。
でも、今は分からない。
それとも、本当は最初から分かってなんていなかったのかもしれない。
「仕事は順調?」
「・・・・部署が違えど、有能な秘書のお嬢様ならお分かりでは?」
「まあ、そうやね。」
「・・・・・・・言いますね。」
久々の二人きりの昼食は楽しかった。
会話も弾み、時折挿むさっきのようなやり取り、じゃれあいが何とも心地よかった。
・・・・・このようなやり取りをしているなんて、中学生の頃は考えられなかっただろう。
思っていた以上にいい意味で二人の関係は崩れ、前よりずっと距離が近い友達になれたと思う。
きっかけは、私の高校卒業時。
いつまでも主従関係が抜けず、気を回す刹那に対し、私は言ったのだ。
刹那が無理をして神経をすり減らして一緒にいてくれても嬉しくない。
自分たちはただの主従関係なのか。
なんでも言えるのが「親友」じゃないのか、と。
私が親友という言葉をはっきりと彼女に言ったのは、それが初めてだった。
そして、おそらく最後になるだろう。
・・・私は、そのときの彼女の表情を覚えていない。
その日から彼女は少しずつ変わっていった。
仕事に関して真面目な彼女は、それを実行するのにあたってものすごい努力と神経をすり減らしたのだろうと、今なら思える。
‘お嬢様’という呼び名が変わることはないが、それは現在もやんわりと続いている「主従関係」でいたしかたないことだ。
それ以外は自然な、とても良好な関係だと私は思う。
やはり、彼女は私の理想を叶えてくれたのだった。
私は彼女を見つめていた。口が小さいのに、少し大きくかぶりついてしまったらしい。
サンドイッチをもごもごと口を膨らませて頬張る姿が少し幼くて可愛かった。
そんな姿を見られたことに気づくと、頬を少し赤くして、目線をそらす。
そんな姿は昔のままだ。
「・・・・変なタイミングで見ないでくださいよ。」
「堪忍。でも可愛かったえ?」
「ううっ、からかわないで下さいっ!」
顔を真っ赤にしながら、彼女は照れ隠しにサンドイッチの最後のひとかけらを口に放り込んだ。
*
公園を抜けて、会社はもう目の前だ。
気を引き締めて午後の仕事に取り掛からないと、上司に何を言われるか分からない。
刹那との昼食後ならなおさらだ。
「楽しかったな・・・。」
なんとなくポツリとつぶやいた。
かつかつとコンクリートで固められた道と、ヒールが音を鳴らす。
(・・・・・・嘘や。)
本当は違う。
本当は今、悲しくてしょうがない。
「嘘や・・・。」
もう一度、今度は声に出してつぶやき、私は笑顔を崩した。
完璧な幼馴染、完璧な親友。
彼女は昔私が言った通りの関係を保てくれていると思う。
だけど、私の心はそれを望んでいない。
自ら彼女を「親友」として縛ったくせに、その言葉が一番私自身を締め付けていた。
行き場のないこの思いを抱えて、私はどこへ行けばいいのだろう。
勝手な感情を彼女に抱いて、どうすることも出来ない
(なんて勝手なんやろ・・・・。)
彼女と別れた瞬間に、私はいつも地獄に落ちる。
彼女と話して楽しかったのは本当。
嬉しかったのも本当。
だけど今は、それがひどく苦しい。
会社は目の前なのに入るのがためらわれる。
このままでは仕事に脳が切り替えられそうもないので、少し気分を落ち着けたかった。
「・・・近衛。」
急に声がして、はっと振り返ると自分の上司がハイヤーから降りてくるところだった。
少し自分の世界に引きこもっていたため、とっさの判断が出来ず少し混乱する。
「おはよ・・・こんにちは?」
何と間抜けな挨拶となってしまった。
「はは。悪い、重役出勤だ。」
すらりとした長身の彼女は、頭を掻きながら、自分の秘書をニヤリ、という笑い方で出迎えた。
それはいつもの彼女の笑い方。なんだかとても気分が落ち着いた。
「ほな、ウチも敬意を払って出迎えさせていただきます。・・・・龍宮副社長サン?」
「・・・・うむ。よきにはからえ。」
ワザと偉そうに、大げさにアクションしながら鞄を渡す龍宮が可笑しくて、思わずクスリと笑ってしまった。
鞄を受け取って、木乃香は龍宮の横に着く。
ここでこの人に会えたのは幸運だった。
木乃香は隣で眠そうにあくびをかみ殺す彼女に、こっそり笑顔を向けた。
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